長期入院で働けなくなる事態にどう備えるか?保険は?

家庭を持つと、万が一の場合に備え、生命保険の加入を考える人は多いです。生命保険は被保険者が死亡した場合、家族に保険金が支払われますが、それ以外の、例えばケガや病気などで長い間働けなくなる場合には、保険金は支払われません。

もちろん、命が助かるのが一番ですが、同時に一家の大黒柱が働けなくなった時の、家族の生活も心配になります。今回は、長期間働けなくなった場合、どれぐらいお金がかかるか、またどう備えるかについて、シミュレーションしてみます。

モデルとする家庭

家族構成
  • 夫(45歳、会社員、年収500万円)
  • 妻(42歳、パート、年収100万円)
  • 子(12歳、小学6年生)
状況

夫が突然統合失調症になり、1年間の入院が必要と言われた。治療費は月100万円程度。

治療費の実質負担はいくらか

健康保険に加入している方の場合、治療費に月100万円かかったとしても、自己負担額は3割なので、実際に窓口に支払うお金は30万円です。

さらに、健康保険には高額療養費制度があり、1ヶ月の支払い金額が限度額を超えると、その限度額を超えた分のお金が後から戻ってきます。

【参考】医療費を心配しすぎない

年収500万円の人の場合、限度額は

8万100円 + (治療費 – 26万7,000円) × 1%

となるので、治療費が100万円であれば、1ヶ月の限度額は、8万100円 + (100万円 – 26万7,000円) × 1% = 8万7,430円になります。

つまり、窓口で30万円は払ったものの、8万7,430円との差額21万2,570円は申請すれば後から戻ってきます。

さらにこの限度額は、4回目からは4万4,400円とさらに安くなるので、1年間の実質的な治療費の負担は、

8万7,430円 × 3ヶ月 + 4万4,400円 × 9ヶ月 = 66万1,890円

となります。

1ヶ月100万円の治療を1年受けることを思えば、ずいぶん負担は軽いですね。

入院でかかる費用は治療費だけではない

入院に必要なお金は治療費だけではありません。

まず、食費が1日1,000円程度かかります。また、おむつなどの一般消耗品も別途お金がかかります。しかし、食費などは入院していなくてもかかるものですし、その他の消耗品もそれほど負担になるものではありません。

長期入院で最も負担になるのは、差額ベッド代です。

入院中のベッド代は、大部屋であれば無料ですが、プライバシーの関係上大部屋は嫌だと言う人もいるでしょう。

その場合、2~4人の相部屋だと一泊5,000円程度、個室だと病院によって一泊1~3万円程度かかります。

仮に1泊1万円だと1ヶ月で30万円。治療費よりよっぽど高くついてしまいます。

病気やケガで働けなくても傷病手当金が出る

次に、入院中の収入について見ていきましょう。

会社員の方であれば、病気やケガなどで働けなくなった場合、健康保険の傷病手当金が、入院4日目から、最大1年6ヶ月の間支給されます。

支給される金額は、正確な数値を計算するには標準報酬月額などややこしくなるのですが、ここでは大雑把に月給の3分の2と覚えておきましょう。

年収500万円の方であれば、手取りは390万円ほどになります。月々24万円に、年に2回のボーナスがそれぞれ50万円ぐらいが相場と考えていいでしょう。

この場合、1ヶ月に支給される傷病手当金は、24万円の3分の2、つまり16万円程度になります。

結局1年間の入院でいくらかかるのか?

では、実際に1年間の入院中に、どれぐらいお金が出ていくのかを見てみましょう。

入院しない場合の生活費(ボーナスは除く):24万円 × 12ヶ月 = 288万円 ・・・ ①

入院した場合の収入:傷病手当金16万円 × 12ヶ月 = 192万円 ・・・ ②

1年間の治療費:66万1,890円 ・・・ ③

①は入院しない場合の生活費、つまり普通の生活でかかるお金です。

入院した場合の収入が②、治療にかかる費用が③なので、①との差額は、288万円 – (192万円 – 約66万円) = 162万円となります。

つまり、162万円あれば、差額ベッド代がかからない大部屋の場合、家族は元の生活と同じ水準で生活できることになります。

前述のように、大部屋が嫌で少人数の部屋に移りたい場合、差額ベッド代が5,000円の1年間分で182万5,000円、個室の場合は仮に一泊1万5,000円とすると、547万5,000円プラスされます。

どうやって備えるか?

大部屋での入院であれば、1年入院したとしても162万円あれば、家族はこれまでと同じ水準で生活ができることになります。

医療保険も悪くはありませんが、この額であれば貯金で用意した方が、いざという時に他の用途でも使えておすすめです。

むしろ、医療保険は差額ベッド代のために加入すると割り切りましょう。入院1日につき5,000円支給される医療保険であれば、少人数の部屋に移る時の差額ベッド代を払えますし、どうしても個室ということであれば、それに見合った金額の医療保険に入りましょう。逆に言えば、会社員であればそれ以外の理由で高額な医療保険に入る必要はありません。

1年間の入院費用が162万円というのは意外と思われるかもしれませんが、日本の医療制度はかなり手厚くできています。

また、162万円というのは1ヶ月24万円で生活している人の6.75ヶ月分の額になります。緊急時資金として、1ヶ月の生活費の3~6ヶ月分は貯金しておきましょうと言われますが、6ヶ月分の貯金があれば大抵の不測の事態に備えることができます。

貯金を第一に、保険はあくまで補助

まとめると、まずは半年分の貯金を緊急時資金として備えるのが一番堅実な対策になります。

もし半年分の貯金がいつ貯まるのかわからないという人は、医療保険を考えましょう。高額なものは必要ありません。1日5,000円の医療保険で十分です。

差額ベッド代が気になりますが、貯金がない時に個室にこだわることもないと思いますし、その時の貯金額に合わせて病院と相談するというのが現実的でしょう。

個々のケースによって変わってきますが、おそらくみなさんが想像するより、負担額は少なかったのではないでしょうか?

必要以上に不安にならず、本当に必要なお金を、貯金や保険で備えましょう。

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