老後のライフプラン3

これまでの老後のライフプランは参考にならない(3)

前回までのコラムで、これまで10年ごとに2~3年のペースで平均寿命が伸びて来たこと、今30代の人の半数は100歳より長生きすること、勤労時間が増えること、人生に何度も職業を変える必要性があることなどをご紹介しました。

老後の時間が増え、それに伴い様々な仕事を体験するには、お金ももちろん大切になりますが、そのほかの資産も必要になります。本コラムでは、そう言った「お金に換算できない資産」を、前回までと同じくリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット共著の「LIFE SHIFT」からご紹介します。

1. 生産性資産

生産性資産とは、直接仕事の生産を高め、所得の向上に役立つ資産です。これらの価値は、所得につながるだけではなく、人生の幸福度を高めるためにも重要とされています。

もっともわかりやすいものが、長い年月をかけて身につけた知識とスキルです。マルコム・グラッドウェル氏が著書『天才』の中で紹介している有名な「1万時間の法則」は、どんな分野でもプロ並みの実力を身につけるには1万時間の練習が必要という理論ですが、本業以外に1日3時間練習するとして、プロになるには9年強かかる計算になります。

第2、第3の人生を楽しもうとする場合、現役時代にこの時間を計画的に捻出する必要があります。

私がこの理論を好きな理由が、音楽家を調査したところ、世界的に有名な人とそこそこの音楽家では、練習時間に明らかな差がみられたことはもちろんなのですが、1万時間に満たない練習時間で世界的に有名な音楽家になった人は皆無という実験結果が紹介されていたからです。

才能ある人は少ない時間でなんでもできるように見えますが、この本では「才能」は、情熱や周りのサポートなど、とにかく1万時間続ける能力であるとされています。

もちろん、どの分野の知識やスキルを身につけるかは、非常に難しい問題です。あらゆる面で優秀な方が、パソコンが苦手なせいで能力を十分に発揮できなくなったような事態が、AIの登場により加速するかもしれません。その意味では、多くの分野でスキルの賞味期限が短くなっていくとも考えられます。

2. 活力資産

活力資産とは、肉体的・精神的な健康と、心理的幸福感のことです。

活力というと、真っ先に思い浮かべるのが肉体的な健康です。もちろん体が健康でなければできることは限られますが、長寿社会でそれより重要になるのが、脳の健康になります。

さまざまな研究によると、加齢による脳機能の低下は、約3分の1が遺伝ですが、残りは生活習慣で決まるそうです。具体的には、日々の行動、コミュニティとの関わり方、人間関係の強さ、肉体的健康、食事などが関係してくるとされていますが、その中でも最も確実に影響を与えるのがわかっているのが「運動」です。この辺りは長くなるので、興味がある方は、ジョン・J・レイティ、エリック・ヘイガーマンの「脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方」を参考にしてみてください。

次に紹介されている活力資産は、家庭でのリラックス度です。職場と家庭の間の感情の伝播は、お互いマイナスに働くことがあります。

家庭での不仲や、パートナーが自分に期待しているものを与えていないという罪悪感を持って仕事に臨めば、課題や意思決定において悪い影響を及ぼすし、仕事でストレスを感じれば、家庭にも悪い影響を与えることになります。

最後に紹介されているのが、自己再生の友人関係です。

この友人関係は、職業上の人的ネットワークと異なり、大抵の場合長い時間をかけて築かれる特徴があります。知り合った時期は、仕事の世界に入ったばかりの頃や、幼い時期まで遡ることも多く、お互い多面的に知っていることも特徴です。つまり、仕事の時、趣味の時、といった一面だけでなく、仕事や趣味両方、休日の姿も知っているなどです。自ずと共通の関心ごとも多くなります。

3. 変身資産

一つの知識だけで人生の労働時間を過ごすことができなくなれば、自ずと多くの移行期を経験することになります。そのために必要な資産が変身資産と言われるものです。

ここで必要になるのが、自分についての知識と、多様性に富んだネットワークです。

まず、多様性に富んだネットワークですが、自分が新しい仕事や専門性を生かしたいと思った場合、当然ながら1人ではできませんし、これまでと同じ人間関係の中でもできないはずです。なぜならこれまでのネットワークは今の仕事に必要な人間関係で構成されているはずだからです。

新しい職に関する情報が、今までの人間関係から入ってくることは少ないと考えましょう。

次に、最も大切になるのが、自分についての知識です。どんな技能でも、自分の長所の上に積み立てた方が確実に人より先に進めます。

自己分析の方法にはさまざまな方法があるのですが、心理学的に自分の強みを測る方法として、以下の2つをご紹介します。

まず、日本でも有名になった、トム・ラス著「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう! 新版ストレングス・ファインダー2.0」です。初版は2001年に発売されましたが、2017年に新版が発売されています。

2つ目が、ペンシルベニア大学が立ち上げたポジティブ心理学のサイトにある、強み診断ツール「VIA-IS」です。以下のサイトから公式ページに行けます。

VIA-IS診断 公式ページ

こちらは登録が必要ですが、無料で診断できます。

どちらのテストも、用語は少し違いますが、能力の間に優劣をつけず、自分の性格の長所を知れる点が画期的な点です。

数学のテストでは、50点と80点では80点の方が能力が高いとされていますが、例えば他人志向が高い人はチームワーク力が高く、低い人(自分志向が強い人)は好奇心が高いという結果が出ます。中間の人は社会的知能が高いことが自身の強みになります。

また、親切な人が大局観を持っている可能性は低く、また熱意と思慮深さを両立できる人もほぼいないことになります。なぜなら、これらの組み合わせは互いにトレードオフの関係だからです。

上記の2つのテストでは、こうした自分の強みとなる特徴を上位5つまで診断してくれます。この結果は、人生を通してそれほど変化がないと言われてますので、興味がある方はぜひ受けてみてください。

まとめ

少し長くなりましたが、今回は長寿化社会の変化に対応するために必要なことを、お金の分野以外でご紹介しました。まだ若い世代の方にとっては、老後が長くなると言われてもピンとこないかもしれませんが、これから働き方が変わる可能性が高いということを知って、そのための準備の助けになれば幸いです。

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