個人年金保険

個人年金保険をすすめない理由

公的年金への不安から、自分たちで老後資金を確保したいというニーズが高まっています。最近では生命保険会社の方針もあり、20代のうちから個人年金保険に入る人も増えていますが、個人年金保険には注意点もいくつかあるので、ご紹介します。

まず、個人年金保険のデメリットとしては、

  • 解約控除
  • インフレリスク
  • 保険会社の破綻リスク

の3つのリスクがあります。他の商品(主に銀行預金)と比べながら、一つずつ見ていきましょう。

解約控除

これは、契約して短期間(10年以内が目安)で解約すると、支払った金額より戻ってくる金額が少なくなるというリスクです。

「どうせ60歳まで解約しないから、気にしなくていいのでは?」と考えがちですが、このリスクは思いの外大きいものです。

会社が倒産する、クビになるというわかりやすい理由だけではなく、例えば急に専門学校にいきたくなるかもしれないし、上司や部署が変わって会社に馴染めなくなり、転職を考え始めるかもしれない。また、一人で暮らしている時なら自分が我慢すれば保険料を払えたけど、結婚すれば当然住宅ローンや教育費などの支出は増えます。

そういった将来のことを考えると、今後何十年にも渡って月々1~2万を無理なく払い続けることは、簡単なことではないと思えます。一方、銀行の定期預金は利率は低いですが、途中で解約しても減ることはありません。

これが保険の解約控除のリスクです。

インフレリスク

例えば、30歳から月1万円ずつ30年間、合計360万円の保険料を払えば、60歳で432万円受け取れる個人年金保険があるとします。返戻率は120%です。

20%も増えてると思うかもしれませんが、これを単純に年率に換算すると、わずか0.67%にすぎません。ただ、これでも銀行預金より高いので、売る側としては「銀行に預けるより確実に増えます」と伝えてきます。

しかし、実は銀行預金の0.1%と個人年金の0.67%は、単純に比較できるものではありません。なぜなら、個人年金の0.67%は30年間変わらないのに対して、銀行預金の0.1%は景気が良くなると上がる可能性があるからです(変動金利)。

さすがにこれから銀行預金の金利が7%8%になることは考えづらいですが、1~2%程度になることなら十分にありえます。いつでも解約できる銀行預金が1~2%の時に、変わらず0.67%の低利率の商品に保険料を払い続けるのは、明らかに非合理的な選択でしょう。これがインフレ時のリスクです。

保険会社の破綻リスク

最後に、保険会社が破綻した場合のリスクに関して。銀行預金では、銀行が破綻した場合でも1,000万円の元本とその利子は保証されます(ペイオフ制度)。しかし、保険会社の場合は倒産した場合、将来受け取れる年金を減らされる可能性があります。

生命保険会社は生命保険契約者保護機構に加入していので、全額なくなることはありませんが、それでも最悪10%は減る可能性があることは覚えておきましょう。

 

まとめると、個人年金保険に加入して得をする場合というのは、

  • 人生平穏で途中で契約を解除しない
  • 銀行の金利が2~30年間ずっと低いまま
  • 契約保険会社が倒産しない

という3つの条件を全て満たした時、ということになります。

加入年齢が低ければ低いほど、この3つを同時に満たす確率は低くなります。理由は、50代より20代の方が当然人生のイベントは多いし、老後までにインフレになっている可能性も高くなるからです。

 

最後に、私が個人的に個人年金を好きになれない理由が、その運用方法が契約者にとって一方的に不利だからです。

個人年金保険はその性質上、損を出すわけにはいかないので、ほとんどが国債で運用されます。今の国債の利率は、30年の長期のものだと、0.83%(2017年8月22日現在)となっています。

上記の0.67%の個人保険の場合、保険料を全て30年ものの国債につぎ込めば、保険会社としてはその差額0.16%(0.83 – 0.67) の利益が自動的に生まれます。つまり、契約者には上記のようなリスクを負わせる一方、保険会社はノーリスクで利益を得ようとする意図が見え隠れしているのです。

 

何もしないよりマシ

ただ、公平を期すためにいうと、個人年金保険に加入してよかったという人もいます。今までお金を貯められなかったのに、毎月自動的に引き落とされるので気づかないうちにお金が貯まっていたという人です。

当事務所では個人年金保険は45歳未満の方はオススメしていませんが、それでも将来のために何も蓄えをしていない人よりは、はるかに健全と言えます。

「個人年金保険はデメリットもあるのか、じゃあやめよう」

ではなく、この機会にぜひ、

「個人年金保険のデメリットがわかったけど、他の選択肢のことも調べて、月々1~2万円は絶対貯めていこう」

と考えていただきたいのです。

将来のためにお金を貯め始めるのは、早ければ早い方がいいです。もし他の商品のことも知りたいと思った方は、以前書いた『どこにお金を預ければいいのか?(1)』、『どこにお金を預ければいいのか?(2)』なども参考にしてみてください。

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